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【結果発表】第3回 朝日ホラーコミック大賞
2024年1月18日
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pixiv事務局です。
2023年8月3日(木)~2023年10月31日(火)まで開催された「第3回 朝日ホラーコミック大賞」の結果を発表します。
「第3回 朝日ホラーコミック大賞」では、実体験をもとにした"リアルホラー作品"や、空想上のとびきり怖い話のマンガ作品、マンガ原作作品を募集しました。
審査委員長の伊藤潤二先生(漫画家)をはじめ、波津彬子先生(漫画家)、後藤博幸さん(「ほんとにあった怖い話」シリーズ(フジテレビ)監修)、馮年さん(東宝株式会社 映像本部 開発チームリーダー)の4名に、それぞれのプロフェッショナルの観点から作品を審査していただきました。
多数の力作の中から、厳正なる審査の結果、受賞の栄冠に輝いた作品を発表します。
審査員の皆さまからの選評もあわせて、ご覧ください。

【マンガ部門】

第3回 朝日ホラーコミックマンガ大賞(1名)

賞品


  • 賞金100万円

  • 隔月刊誌「HONKOWA」または「Nemuki+」へ掲載

  • 朝日新聞出版書籍編集部の担当が付き、連載を検討

受賞作品

●伊藤潤二先生
道端に突っ立っているのが人形なのか、それとも生きている人間なのかわからないという設定が面白いと思います。絵も達者で読みやすく、奇妙な話としての魅力もあると思います。
ただ、ワンアイデアによるストーリー展開なため、物語の起伏に乏しい面もあり、ストーリーの構成にまだ進歩の余地があるというのも評者の皆さんの一致した意見でした。また、あるコマでは人物の位置関係が左右反転しているのではないかと思われる絵があり、これはデジタル作画で起こりがちなミスかと推察します(違ってたらすみません)。
改善の余地がある作品ですが、この作品の奇妙な発想は才能によるところが大きいと考え、そこを評価しました。
●波津彬子先生
ただ怖いだけではなく可笑しさもあり、ちょっとシュールな世界観が面白く読めました。絵もお上手で各シーンしっかり描かれているのがいいです。
ただこのお話は読者が主人公と一緒に驚いたり怖がったりして読んでいくものだと思うので、初めに主人公に感情移入できるかどうかは大事かと思います。最初のページで相手を見たときに主人公がかなり意識しているので怖くなり、私だったら前を通らず逃げるかなと思いました。初めはそれほど怖いとは思わなかったけれど、前を通るあたりから異様さに気がついていく…という感じで段階を踏んで畳み掛けていくと怖さが増すように思いますし、オチも効きます。
少し捻ったお話を描ける方だと思いますので、今後を楽しみにしています。
●後藤博幸さん
恐怖とは考えるからこそ生まれるのかもしれない」というモノローグから始まり、その矢先、主人公が得体の知れない存在に遭遇するという掴み、そして、人なのか人形なのか幽霊なのか謎のまま“それ”が主人公についてくる。シンプルではあるが、“それ”が何者なのか予測できないという引っかかりが良いエキスとなっている設定に引き込まれた。途中、家の前に佇む“それ”を主人公がスマホで動画を撮り続けたり、姉がいきなり石で“それ”を殴りつける描写など、「おいおい、なぜわざわざそんなことするんだよ!」とハラハラさせる、所謂“ホラーあるある”要素も良い。そしてラスト、“それ”の「警察はかんにんして」はオチとして賛否両論かと思うが、個人的にはツボだった。恐怖と笑いの狭間を絶妙なバランスでさまよう感じがとても良かったと思う。
●馮年さん
シチュエーション設定とラストのオチにオリジナリティがあり面白いと思いました。また、「恐怖とは考えるからこそ生まれるのかもしれない」という問い立てが秀逸で、「思考」を軸にして物語が展開する構成は良いアイデアだと思いました。一方で、折角素晴らしい問いを立てているにも関わらず、姉妹の「思考」に関する描写の解像度がもう一歩足りておらず、非常にもったいないと感じました。人形の体温は? 皮膚の質感は? そもそも呼吸しているのか? …視覚だけに捉われず五感を活用して「思考」する所まで踏み込めて描けていたら、もっとリアリティのある豊かな物語になったのではないかと思います。

優秀賞(2名)

賞品


  • 賞金10万円

受賞作品

●伊藤潤二先生
中国や日本に古来から伝わる妖怪を題材にした事で、物語に説得力を与えていると思います。縊鬼と呼ばれる妖怪に取り憑かれた人を、その身代わりになることで救う主人公ですが、それには実は意外な狙いがあったというどんでん返しも、効果を出していると思います。
ただ、短編ゆえか主人公と縊鬼の関係性を十分に掘り下げるに至らず、そこが残念であるというのが評者の皆さんの一致した意見でした。
絵については主人公の表情などに魅力があります。背景描写も含めて、これからも精進していただきたいと思います。
●波津彬子先生
通夜の夜という何か起こりそうな設定で何か起こるのだけど、途中までどちらの方向に行くかわからない面白さがあります。始まりの台詞と最後の方に出てくる台詞が対になっているのも気が利いていて上手いです。絵も人物は取っ付きやすく、状況もわかりやすく描かれていてとてもいいのですが、肝心のおばあちゃんが怖くなるときのデロデロがらしく見えないので、この描き方にもうひと工夫あるともっと怖くなった気がします。
設定の「田舎の家で親戚が集まるお通夜」という状況は私の世代ならよくわかるのですが、今どきはわからない人が多いのではないでしょうか。主人公が感じるギャップをもう少し丁寧に描くと、状況説明にもなるしおばあちゃんとの世代の差、意識の差がもっと浮き彫になったと思います。

【原作部門】

第3回 朝日ホラーコミック原作大賞(1名)

賞品


  • 賞金30万円

  • 受賞作品を原作としたコミカライズ作品を、隔月刊誌「HONKOWA」または「Nemuki+」へ掲載

  • 受賞作品のオーディオブックを制作し、AmazonAudibleにて配信

受賞作品

●伊藤潤二先生
今回、原作部門の最終選考に残った作品は全体的にレベルが高く、選考に悩みました。
「ネクロオパール」は、最近クローズアップされることの多い「トー横」からヒントを得て設定された、愛に飢えた少女二人のキャラクターが魅力的で、コミカライズすれば漫画家は存分に腕を振るう事ができるでしょう。美しい少女とグロテスクな残酷描写のコントラストも鮮烈なイメージを掻き立てます。
クライマックスで、それまで見つからなかったネクロオパールが突然見つかるくだりが少々わかりにくく、読んでいて混乱しましたが、これは二人の少女の愛が交わった事で結晶化されたという解釈で合っていますでしょうか。
●波津彬子先生
今回の原作賞応募作はどれも面白く選考は迷いましたが、ただ飽くまで漫画の原作なので、どう漫画化できるかを考えて選びました。
この作品は現代のリアルな設定から始まりますが、少女たちの関係性や一転悪夢のような状況に変わる展開はサスペンス、スプラッターなシーンもあればファンタジー的な要素もある…漫画にするときにアレンジの余地が多いと思いました。漫画化する人によって結構印象が変わる作品になりそうなのが面白いです。どういう作品になるか楽しみです。
腐臭の漂う思い切り耽美な漫画にして欲しいと思っていますが、これは私の趣味です。
●後藤博幸さん
少女2人のピュアさがすごく心地良く、この作品の世界観にハマってしまった。地下室へ監禁し左腕を切断するなどのスプラッター要素があるが、リナとカノンの間にしか存在し得ない特別な絆に共感できたため、グロテスクな描写も不思議と嫌な感じがしない。薬で意識が朦朧とする中、監禁場所から脱出できるのか? できないのか? ハラハラさせる展開も良かった。「トー横」をイメージさせる場所、そこに集まってくる未成年たち、オーバードーズなど、設定に“今”を感じ、もしかしたら歌舞伎町のどこかにこんな地下室があり、誰かがこんなことをしているのかもしれない、そう思わされてしまう妙なリアリティにも魅力を感じた。
●馮年さん
スペインが誇る巨匠ペドロ・アルモドバル監督の映画を思わせる、独特な世界観の中で脳内に映像が残り続けるような強烈な作品で素晴らしいと思いました。二人の少女の友情とも愛情ともいえる強い感情が歪んだ形で表出していくのですが、そこに美しさと清らかさがありました。この二人の関係の変化とラストでの狂気の継承は見事な運びだと思います。トー横キッズという社会問題を背景にし、社会と地続きの物語に仕立てられている点も、二人の少女の物語にリアリティを与えていました。このように物語の心臓部が上手く機能した上で、ノコギリによる左腕の切断、水槽に入れられた左腕、神々しいネクロオパールといった強烈なビジュアルイメージが組み合わさり、唯一無二の世界観になっていたと思います。文体も読みやすく、非常に面白く拝読いたしました。

優秀賞(1名)

賞品


  • 賞金10万円

  • 受賞作品のオーディオブックを制作し、AmazonAudibleにて配信

受賞作品

●後藤博幸さん
今年の最終選考作品は先の展開がある程度読めてしまうものが多かったが、この作品は予想を見事に裏切ってくれた。「うちに知らない男の人がいる」という掴みにまずはワクワクし、主人公の少女へ徐々に迫りくる男にハラハラ、その正体は妖怪ぬらりひょん? この妖怪は少女にいったい何をしでかすのかとドキドキして読み進めると、なんと、主人公は少女ではなくおばあちゃんだった!? 作者の罠にまんまとハマってしまった。ただ、文章では見事に騙されたが、マンガ化や実写化においては、難易度の高い原作だとは思う。だからこそ、筆力の優れたマンガあるいは演出力に長けた実写で、もう一度騙されてみたい。
●馮年さん
時代性のあるテーマと視覚的に面白いアイデアの二点が素晴らしく融合したサイコスリラーで、思わず唸ってしまったほど抜群に面白かったです。まずテーマについて、認知症の老人本人の葛藤と介護する家族の苦悩という高齢化社会の今の日本を取り巻く現実が上手く描かれていました。これは海外にも通用する日本ならではのテーマです。私見ですが、ホラーは現実を語る合わせ鏡であるべきだという点を再認識させてくれる作品でした。次に、ホラーのアイデアについて、女子中学生が実は認知症の老婆だったという反転が、前半の伏線も含めて秀逸に描写されており、映像化したら面白そう!と思いました。小道具や周囲の状況から不審な男の不在の恐怖を描く前半とそれが老爺として現れる中盤で恐怖のグラデーションがついており、後半の反転で全て綺麗に回収される様は実に見事でした。主人公の感情がしっかり描かれていたのも素晴らしかったです。
受賞者のみなさま、おめでとうございます。
たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
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