light
pixiv(ピクシブ)は、イラスト・マンガ・小説の投稿や閲覧が楽しめる国内最大級の作品コミュニケーションサービスです。
「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ×pixiv イラスト俳句コンテスト」結果発表
2024年4月9日
シェア
pixiv事務局です。
2023年12月25日(月)~2024年1月31日(水)まで開催された「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ×pixiv イラスト俳句コンテスト」 の結果を発表します。
本コンテストは「pixiv」と「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」とのコラボレーション企画で、3枚のお題イラストからそれぞれ自由に連想した俳句を募集し、夏井いつき氏が選句しました。
厳正なる審査の結果、受賞の栄冠に輝いたのは以下の作品となります。夏井いつき氏の選評もあわせて、ご覧ください。
また、最優秀賞作は2024年4月29日(月)から5月5日(日)までの期間、東京メトロ新宿三丁目駅改札前のデジタルサイネージにて公開します。お楽しみにお待ちください。

総評/夏井いつき

「pixiv」と「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」のコラボレーションという新しい試み、興味深く選句させていただきました。三枚のイラストに描かれた魅力的な世界は、詠み手の想像力、創造力を生き生きと刺激してくれたのではないでしょうか。
イラストAには「あやかしの棲む異界」、イラストBには「夏の日の孤独な少年と猫」、イラストCには「近未来、あるいは過去を描いたSF的な世界」の句が多く寄せられました。
入賞作品には、イラストに描かれている人やものを「説明」するのではなく、その世界観をいったん自分の中に受容し、昇華し、そして俳句として新たな世界を生み出している、作品を選びました。

最優秀賞/各部門よりそれぞれ1名

賞品

・夏井いつき氏の講評
・都内駅構内でのデジタル広告の掲出(予定)
・お題のイラストと受賞句を掲載したアクリルブロック
・夏井いつき氏サイン入り『夏井いつきのおウチde俳句』(朝日出版社)

イラストA「雨上がる」部門

「かの村」「慣わし」とだけ書かれているのが、かえって読み手の想像を掻き立てます。古い伝承の中にだけ存在している村かもしれません。そこには禁忌にも似た十の慣わしがあるのでしょう。晴れているのに雨が降る天気のように、どこか不思議な、どこか懐かしい、そしてどこか少し怖いようでもある世界。今、目の前をきらきらと通り過ぎてゆく「狐雨」は、かの村もまた静かに蒼く濡らしているのでしょう。

イラストB「路地裏、猫」部門

これだけで一つの短編小説のような一句です。
お父さんが再婚したばかりなのでしょう。仕事か買い物か、「あたらしい母さん」は外出中。母さんが帰ってくるまで、虹を眺めながらその子は待っています。美しくて儚い虹。母さんができた嬉しさや気恥ずかしさ、同時に戸惑いや不安……さまざまな感情が虹のように隣り合い重なり合っているのでしょう。
でもきっと、この子は雨上がりの空のように晴れやかに母さんを迎えるに違いありません。

イラストC「グリーン車」部門

はるか昔に廃線になった電車の句はかなりありましたが「出発まで千年」という、過去ではなく未来へ視点を向けた発想が新鮮でした。
気の遠くなるような長い時の果てに出発する電車を、生まれ変わり死に変わりし続けた未来の自分が待っている……そんな不思議な場面を思いました。「万緑」という季語の力が「千年」という時間を支えます。今、この駅を包んでいる樹々の緑は、遠い未来でもあふれんばかりの生命力に満ちているでしょう。

おウチde俳句くらぶ賞(優秀賞)/各部門よりそれぞれ3名

賞品

・夏井いつき氏の講評
・お題のイラストと受賞句を掲載した名刺サイズのカードセット

イラストA「雨上がる」部門

イラストから「あやかし」を連想した句は多かったのですが、「箱庭」という設定がユニークです。小さな箱庭の小さな森あたりにありそうな「あやかしの場所」。じっと箱庭を眺めていると、ひそひそ、ざわざわ……あやかし達の気配がしたような。
上五の「神域ぞ」の出だしにはっとさせられました。さらに「摘むな」という畳みかけが一句を引き締めています。ほの暗い神域にひっそりと咲く花の朱色は鮮やかで、どこかしら妖しげでもあります。「狐の剃刀」という字面もまた効果的です。
激しい雨が通り過ぎていったばかりの街。陽が差し始めると、ものみなすべてが生き生きと輝いて見えます。水都という場所を響く鈴の音までもが、雨に洗われたかのように清らかに澄んで美しいのです。なんとも清々しい一句です。

イラストB「路地裏、猫」部門

プールへの誘いを「だるいから」という口実で断って、いつもの猫に会いに行きます。夏の暑い昼下がり、のっそりと現れた猫も何ともだるそう。何をするでもないけれど、妙に気の合う一人と一匹。明日も会おうね、と心の中で約束するのです。
お店でのトラブルでしょうか、個人的な諍いでしょうか。炎天下の路地裏に響いているのは、「カタコトの怒号」。外国人のものと想像しました。立ち去りたいのに気になってしまう。うんざりするほどの暑さが、更に怒りを増殖させているようです。
友達はみんな私立へいくと知った日。陰りを帯びた晩夏光のなか、自分だけが取り残されたような淋しさと口惜しさが胸をひたひたと満たしてゆきます。「いくってさ」という、ちょっと投げ出したような語りが、やるせない気持ちをリアルに伝えます。

イラストC「グリーン車」部門

植物はもちろん、動物の剥製や骨格まで様々な標本を一堂に見られる博物館の「標本室」。「標本室のやうな」からは、時代を超えた様々な命が共存しているような森をイメージしました。緑を潤した雨上がりの森に、美しく瑞々しい虹が現れました。
黎明の3番ホーム。「芽吹く」のは、そこに生えている草木なのでしょうか。でも、もしかすると作者の心が、新たな芽吹きの時を迎えているのかもしれません。ようやく明るくなり始めた今日の空へ向かって、生き生きと力強く出発します。
地球が滅びた世界という見立ての投句はかなりありました。この句は、更にその後の未来を描いているのだと思いますが、「新樹光」の美しさ、「星に始まる第二章」の明るさが魅力です。再びここに始まる新たな生の営みを祝福せずにはいられません。

佳作/複数名

賞品

・pixiv小説編集部オリジナルグッズ

イラストA「雨上がる」部門

イラストB「路地裏、猫」部門

イラストC「グリーン車」部門

受賞者のみなさま、おめでとうございます。
たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
このページをシェア