pixiv事務局です。
2024年12月24日(火)~ 2025年2月28日(金)まで開催された、「俳句甲子園フェス meets pixiv イラストで一句!コンテスト」の受賞作品がついに決定しました。
3つのイラストお題を元に自由に着想した俳句を募集する本コンテストでは、650作以上の応募作品が集まりました。たくさんのご応募ありがとうございました。
厳正な審査の結果、受賞となりましたのは以下の作品です。
■大賞(全部門から1名)
▼賞品
・俳句甲子園フェス審査員(若林哲哉先生)の講評
・お題のイラストと受賞句を掲載したアクリルブロック
〈講評・若林哲哉〉
「鉄鈷雲(かなとこぐも)」は入道雲の中でも大きく発達した雲のこと。夏の空に立ち上り、雷雨をもたらす。平和な現在にあって、しかしながら鉄鈷雲がすぐそこに存在するように、戦争もまた決して程遠いものではない。「戦争が来るよ」という呟きには、それが逃れられない運命であるという諦念が滲む。テーマイラストから感じられる雨の匂と冷気に、一句の世界と主体の心情が調和する。
■準大賞(全部門から2名)
▼賞品
・俳句甲子園フェス審査員(若林哲哉先生)の講評
・お題のイラストと受賞句を掲載したアクリルブロック
〈講評・若林哲哉〉
「田水沸く」は夏の季語で、強い日差しによって田んぼの水が沸騰しているかのように見える様子を指す。星がきれいに見えるのは、やはり灯りの少ない土地。廃村になったのか合併されたのか、村が消えた経緯は想像に委ねられているが、季語からイメージされる風景や土の匂いが郷愁を誘う。夕暮れ、田んぼの向こうの街の灯を遠く眺める主体。テーマイラストの空に輝く星々は、心象風景のようにも想われてくる。
〈講評・若林哲哉〉
「プール」は夏の季語。夕暮れ時までプールで遊んだ後、自宅へ帰っているのだろう。プールに入っていたから涼しいような、夕暮れとはいえ日差しに暑さが残っているような、そんな感覚が想起される。そして、空を見上げては、雲の形を何かに喩えながら家へと向かう。懐かしい童心の溢れる一句であるとともに、心地のよい疲労感と充足感が伝わってくる。
■優秀賞(全部門から5名)
▼賞品
・俳句甲子園フェス審査員(若林哲哉先生)の講評
・お題のイラストと受賞句を掲載したアクリルカード
〈講評・若林哲哉〉
「黒南風(くろはえ)」は、梅雨の時期に吹く雨交じりの風を言った夏の季語である。学生証を川に投げたのは何故だろうか。例えば、学校に通うのが厭になってしまっただとか、通っていた大学を辞めて地元に戻ってきただとか、学生証の写真に写る自分の顔が憎くなってしまっただとか。物語や心情は様々に想像出来るが、いずれにしても屈折した心情が伝わる。テーマイラストが学生証を川に投げた後に眺めている風景だとすると、そのあたたかさに救われる。
〈講評・若林哲哉〉
「帰省」は、夏休みを利用して故郷に帰るイメージから、夏の季語とされている。「したんです」とは、誰かへの応答あるいは応答を模した表現。本来的に帰省は必ずしも理由を必要としないものだが、自分の故郷への愛着は鉄塔の風景にあるのだと自身で再確認しながら、同時にそれを表明しているのである。詳しい情感を言わずに「エモくて」と現代的な言葉でまとめたところに、照れくささのようなものも感じられる。
〈講評・若林哲哉〉
「釣瓶落とし」は秋の季語。一気に沈んでいく秋の日の様子を、釣瓶になぞらえているのだ。「あざした」という砕けた言葉遣いからは、主体の人となりや一句の中に描かれた二人の関係性についての想像が広がる。テーマイラストのカーブミラーには、夕空へと続く道が描かれているが、別れた後の相手を見送っているようにも、一人の帰路を歩き始めたようにも想われる。
〈講評・若林哲哉〉
発見の驚きがある一句である。黒猫に対してカーブミラーが高すぎるだとか、夕闇にまぎれているので映っていないように見えるだとか、現実に即して解釈することも可能だが、それに留まらないのはやはり「黒猫」ゆえだろう。黒猫が目の前を横切るのは何かの前兆であると言われるように、黒猫はしばしばスピリチュアルな存在として扱われる。そもそもその黒猫はそこに居たのだろうかという、不思議な読後感が漂う。
〈講評・若林哲哉〉
傘は、雨から身を守るためのもの。覆うようにして何かを守るものを比喩的に「傘」と言うこともある。すると「傘だけが負ける」とは、守ることが叶わずに守るべきものを危険に晒してしまう情況だということになる。それによって世界は救われるのだろうか。そんな命題をはらんだ一句だが、風で傘が吹き飛ばされて雨に身体を濡らすとき、自分と世界との隔たりが失われたとき、確かに世界は救われるのかも知れない。
■佳作(全部門から10名)
▼賞品
・pixivオリジナルノベルティ
受賞者のみなさま、おめでとうございます。
この度はたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。
今後もpixivに投稿されている作品をお楽しみください。