pixiv事務局です。
2025年10月31日(金)まで開催された、「第4回朝日ホラーコミック大賞」の結果発表を行います。このたびはたくさんのご応募、誠にありがとうございました。
数多くの素晴らしい作品の中から見事、受賞の栄冠に輝いたのは、こちらのみなさまです。
マンガ大賞(マンガ形式から1名)
賞品
- 賞金10万円
- 「HONKOWA」または「Nemuki+」掲載
- 担当編集者付き+連載検討
受賞作品・選評
イマジネーション豊かな作品だと思います。村外れの祠を荒らしたことにより村に異変が起こるのですが、その異様な風景の描写が独特で惹きつけられます。風景の中に散りばめられた意外なアイテムの数々がなんとも言えない雰囲気を作り出しています。ところどころにはっとする構図もあり、感心しました。絵は比較的ラフな画風ではありますが、上手いと思います。こんなイメージを表現したい、読者に伝えたいという意思が伝わり、成功していると思います。
(伊藤潤二先生)
一推し作品でした。まず構成がお上手で、冒頭からお話に無理なく入っていけますし、決めゴマの置き方・構図が素晴らしいです。主人公は可愛くて好感持てるし、幻想シーンの世界観もいいです。ただ惜しいのは「オカカサマって何だったの?」という引っかかりが残ることです。何やら冊子や異形のものたちの言葉で匂わせていますが、もう少しだけオカカサマが何か、または祠に祀られた由来を出してもよかったのではと思います(あまり説明しすぎると興醒めする恐れもあるのでバランス大事)。そして絵がとてもお上手で難しい構図も難なく描いていらっしゃるように見えます。描けるが故に少々線が飛ばし気味で、そのため絵を描かない人には雑に見え、世界観も伝わりにくいです。勿体無いことです。これは人物も背景も線質が同じなのが一因かなと思うので、物の質感を意識して描かれてはどうでしょうか。(波津彬子先生)
ある村の祠をきっかけに、ふと異界へ迷い込むスケール感には圧倒されました。不思議な世界観およびビジュアルの迫力で一気に物語へ引き込まれ、過酷な状況下でも揺るがない主人公・紫陽花の健気さには胸を打たれました。村全体が濁流にのみこまれる中、「オカカサマ=お禍母さま」であることがさりげなく明かされる流れは巧みで、そこから展開される異界の風景とそこに点在する無数の個性的な顔の描写には強いインパクトがあり、実写化は容易ではないと感じさせられました。漫画ならではの強みを出せた作品かと思います。欲を言えば、“禍”と“母”というワードに意味があるだけに、「お禍母さま」の背景や真相について匂わせだけでもあっていいかと思いました。ただ、ここは好みの分かれるところかもしれません。(後藤博幸さん)
祠に祀られた不思議な岩を持ち出すという、怪談としては王道の導入ながら、その後に展開される悪夢の描写が非常に鮮烈で心を奪われました。特に町中を飲み込む洪水のようなイメージや、そこに出現する奇妙な化け物の造形には、作者独自の豊かな想像力と視覚的なセンスが光っています。
印象的だったのは、恐怖一辺倒に陥らない物語の構成です。罪悪感から祖母手製のぬいぐるみを供える少女の健気な行動や、呪いを解くために危険を顧みず「大冒険」へ踏み出す姿には、思わず応援したくなるような強い牽引力がありました。今後はさらにキャラクターの感情の機微を深く掘り下げ、内面描写に厚みを加えることで、より一層読者の心に深く刻まれる物語を紡げる作家さんになると期待しています。(馮年さん)
選考会で満票で大賞に選ばれた作品です。「オカカサマ(お禍母さま)」の祠に祀られていた物をいじめっこ達が持ち出してしまったことで、主人公も巻き添えを食ってオカカサマの怒りを買うという理不尽なお話ですが、いじめられっこの主人公がオカカサマの怒りを鎮めるために勇気をもって立ち向かうという成長物語でもありました。オカカサマの別世界が非常に独創的に描かれていて、もし続編があるならば、主人公にこのユニークな世界をもっと旅してほしいと感じさせました。絵が若干、雑に見えますが、丁寧に描けばとても上手に描ける方なのだろうと思います。物語のテンポ、構成、独創的な世界、魅力的な主人公、あらゆる点でよくできていると感じさせる作品でした。それにしても「オカカサマ」とは一体……?(畑中雄介さん)
マンガ優秀賞(マンガ形式から若干名)
賞品
受賞作品・選評
主人公が眠る部屋の天井に現れる口。その虚ろに開かれた口には四角張った歯が並んでいて、滴るよだれとともに白い何かが主人公に向かって伸びてくる。まるで、怪談本の名著「新耳袋」を思わせる怪奇現象ですが、のちにこの口の正体がわかる展開が面白いです。大きな震災に絡めて、両親に愛されていないと感じる幼い主人公の孤独がよく表現されていると思います。代々の先祖に守られているという心が温まるラストも、良い読後感でした。
(伊藤潤二先生)
まずは、表紙のタイトルおよび唇と歯のビジュアルに強く惹きつけられました。物語冒頭、主人公の目の前にそれはいきなり現れ、以降、常に得体の知れないものに覗かれているような妙な違和感を覚えながら物語は淡々と進みます。この“淡々と”というのがミソで、「これ、もしかして実体験?」と感じさせる味付けが絶妙でした。そして、覗き口の歯が、実は先祖代々の遺影だったのは全く予想出来ませんでしたし、さらに、滴っていたものが、幼い主人公を救いたいという思いからの先祖たちの涙だったというオチにはグッとくるものがありました。恐怖を煽る表紙のインパクトから始まり、この短いスパンの中でラストの感動へ持っていく展開はなかなかのものだと思います。(後藤博幸さん)
話としての面白さがとびぬけているというわけではありませんが、全体のバランスが非常によくできている作品でした。物語の冒頭、主人公の部屋の天井に現れる巨大な口。古い家に巣食う物の怪の類いかと読者に思い込ませる展開。私も完全にだまされました。一方、主人公を取り巻く状況もテンポよく読者に見せていきます。いつも喧嘩をしている両親。唯一の拠り所の優しいおばあちゃん。でもおばあちゃんは最近亡くなってしまった。ここまでが作品の前半部分。ここから後半にかけて一気にもりあげていくのですが、怪物の「歯」だと思われていたものが、じつはご先祖様の遺影というサプライズには感心させられました。なぜご先祖様が天井に現れていたのかが明らかになり、大好きなおばあちゃん、喧嘩ばかりしている両親と、この物語の登場人物全員が読者に感動を与える役割を担っていて、よく練られた話であることがわかります。読後感が一番良い作品でした。(畑中雄介さん)
原作大賞(小説形式から1名)
賞品
- 賞金10万円
- 「HONKOWA」または「Nemuki+」でコミカライズ掲載
受賞作品・選評
後半、意外な展開で面白かったです。前半の主人公の焦りとホラーな展開で畳みかけて、後半の別視点からの謎解きという構成もいいと思います。さて、これは原作なので漫画化する方の技量も必要です。前半読者が状況を把握できないとミスリードもできませんので、状況をわかりやすくテンポよく描いて欲しいです。大事なところです。そして登場人物の少女ですが、彼女をどう描くかでこの作品の魅力も変わってくるかと思います。審査している時に中学生がこんな行動をするかという意見もありましたが、タイトルは「ギタイ」です。思い切り漫画ならではのケレン味を持って、魅力的な少女を描いてもらえたらと思います。これは私個人の感想ですけど。(波津彬子先生)
予想外の犯人(?)という大きなサプライズが仕掛けられていて、思わず「あっ!」と声を上げ、そして「やられた~」と唸ってしまいました。主人公の男がひき逃げ事件を起こし、そして死ぬまでを前半とするならば、男の車に乗っていた少女の正体が明らかになっていく後半部分はミステリー小説の解決パートにあたる部分でしょうか。よくできた2部構成になっていて、すっかり作品に引き込まれました。読者にミスリードを起こさせる仕掛けも巧みでした。私は完全にひっかかりました(笑)。こちらの作品をコミカライズする予定ですが、どのような漫画になるのか非常に楽しみです。
(畑中雄介さん)
原作優秀賞(小説形式から若干名)
賞品
受賞作品・選評
愛妻の余命がわかってしまった主人公の話となれば、それにどう抗うか、あるいはその残された時間をいかに大切に過ごしていくか、というようなハートウォーミングな展開になるのかと思いきや、全く逆な方向に展開していくので面白かったです。選考会では、余命のカウントダウンのルールが多すぎるという意見も出ました。確かに複雑になり過ぎている感もあり、そこはもう少し整理できたのかもしれません。ただ一方で、次々に新しいルールを出して読者を惑わしながら意外なラストに繋げているわけで、それこそが作者の狙いでもあったのかなと思いました。(伊藤潤二先生)
手の甲に浮かぶ“死までの数字”というキャッチ―な設定を用いながら、人間の身勝手さを鋭く描いた作品だと思いました。カウントダウンの設定がややこしく感じるところも若干ありましたが、主人公の姓を最後まで明かさなかったのは、いい意味で引っ掛かりになったのではないかと思います。とりわけ印象的なのは、妻の余命を知ってからの主人公の変化です。戸惑いから始まりながらも、やがて「どうせいなくなる」と未来を計算し、不倫相手との生活を思い描く様には、卑怯さと同時に生々しい現実味を感じました。残り時間に応じて優しさを調整する態度も含め、人間の弱さが丁寧に描かれていたと思います。ラスト、数字の意味の反転は非常に効果的で、主人公の打算がそのまま跳ね返ってくる展開は爽快そのものでした。(後藤博幸さん)
泥棒の一人称を貫いた語りがとても印象的でした。飄々とした口調や自嘲気味のユーモアが物語に軽やかさを与える一方で、その視線の先に“食人”という強烈な嫌悪を置いた構成は巧みだと思いました。微笑ましく読んでいたはずの場面が、一瞬で凍りつく落差が効果的です。父・淳一と勇太の関係も肝で、献身と依存が絡み合う共依存の構図に静かな狂気を感じました。とりわけ父の死後、勇太が行為を引き継ぐ展開には、愛情の継承と倫理の崩壊が同時にうまく表現されていたと思います。さらに、泥棒が“功績を正しく評価したい”と懇願する結末には、歪んだ正義感が鮮明に表れており、この静かな口調のまま倫理を踏み外していく語りが、読後にじわじわと効いてくる一作でした。(後藤博幸さん)
一見すると老人と引き籠りの息子が静かに暮らす一般家庭。その実態が「スウィーニー・トッド」を彷彿とさせる殺人、そして食人というおぞましい狂気に満ちている——。そんな衝撃的な設定でありながら、物語の語り口には不思議な温かみが宿っています。
何より惹かれたのは、語り手である泥棒の視点です。眠っている息子にそっとブランケットを掛けてあげるような、グロテスクな状況に同居する人情味とペーソスこそが、本作の真の魅力だと感じ強く推させていただきました。老人に心酔した泥棒が、その名誉のために警察で証言するくだりには、単なる恐怖を超えた人間ドラマの厚みが感じられます。悪人にも人の心があり、善人そうな老人にも狂気がある。こうしたキャラクターを多面的かつ立体的に造形できる筆力は、漫画のみならず映像の世界でも大きな力を発揮されることでしょう。今後のご活躍が非常に楽しみです。
(馮年さん)
受賞者のみなさま、おめでとうございます。
この度はたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。