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「『エモい古語辞典』小説コンテスト」結果発表
2023年3月6日
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pixiv事務局です。

2022年9月22日(木)〜2022年11月20日(日)まで開催された、小説コンテスト「『エモい古語辞典』小説コンテスト」の受賞作品がついに決定しました。

『エモい古語辞典』(朝日出版社)に掲載された古語から連想される物語を募集した本コンテストでは、500作品以上の応募作品が集まりました。たくさんのご応募ありがとうございました。

【全体講評】
『エモい古語辞典』小説コンテストにたくさんの作品をお寄せくださり、ありがとうございました。「可惜夜」「海月の骨」「恋草」「泡沫」「瞋恚の炎」など12個の古語から連想された物語。古代・中世を舞台にしたものから、現代を描いたものまで、とても幅広く、どれも光るものがありました。高校・大学時代の一瞬のきらめきから浮かんでくる古語、または古語に触れて呼び起こされる記憶。平安時代に交わされた文から巻き起こった愛情、転じた憎悪。SF世界にちりばめられる古語に込められた、人や自然の摂理。お題とされた古語の取り扱いも、直接的なものから物語全体を通じて浮かび上がらせるものまで、とても多様で小説の奥行き、可能性を感じることができました。特定の言葉にとらわれて物語を展開するのではなく、その言葉が持つ射程を生かした物語の軽やかさ、心に訴えかける強さに、時代を超えた感情の機微を受けとれたと思います。宝石のような言葉たちを紡いだ、すべての作品に感謝申し上げます。(朝日出版社)



厳正な審査の結果、受賞となりましたのは以下の作品です。


■大賞(1名)
賞品:著者/朝日出版社からの講評
『エモい古語辞典』の表紙イラスト柄の図書カード20,000円分
海島千本さんが描いた『エモい古語辞典』の表紙イラスト付きでpixivノベルに掲載

「モラトリアムの夜明け前」/石見千沙さん

〈選評〉
「可惜夜(=明けてしまうのが惜しいくらいすばらしい夜)」を終わってほしくない大学生活になぞらえ、かつ「可惜夜」の和歌もストーリーに自然に盛り込んでいる大賞にふさわしい作品だと思いました。文化知識を共有していて、夜通し語り合っても話がつきない人間関係って、確かに社会人になったら得難いので、間違いなくエモいですね。(堀越英美氏)

〈大学時代を一日に例えるなら、今は明け方前にあたるだろう〉
大学卒業まで残り一ヶ月、四年間をともにした三人が夜明け前から賀茂川沿いを三条大橋まで歩く。まだ暗い空には三日月が光を放っている。思い出話、ほんのわずか残された時間の計画を交わし合う。それでも〈どんなに抗ったって、朝は来てしまう〉。どの時代でも、どの世代でもきっと経験がある。これから経験をする。なにげない一日が積み重ねられて、それぞれ過ごした時間が立体的になる。同じ場所にいた夜、あの人がいたらよかったのにと思った夜。どうしたって朝は来るから、それまで未来の話はしないけれど、三日月の光が届かなくなったら、今度はまたの再会を力強く信じて歩き続けられる。
三人が交わす言葉をずっと聞いていたかったし、夜が明けないでほしいと思いながら読みました。これこそ「可惜夜」だとかみしめながら。遠い時代の人が詠んだ歌に込められた思いは、現代にまで届いていて、この物語が私たちの知らない未来を照らしていくと信じられます。(朝日出版社・橋)



■朝日出版社賞(2名)
賞品:著者/朝日出版社からの講評
著者サイン入りの書籍
『エモい古語辞典』の表紙イラスト柄の図書カード5,000円分

「最終回のために」/襟草庭(てい)さん

〈選評〉
書き出しからエモくていいですね。恋自体が「ありえないもの(=海月の骨)」になっている不思議な世界が魅力的な単語選びとともに描けていると感じました。(堀越英美氏)

「名前」「記憶」「恋愛」など、私たちが普段当たり前のものとして意識することのない様々な概念について、再定義を求められる思弁的SF。一読して理解するには至らなかったが、再読・再々読を自然とうながされた。そのことがこの小説の魅力を証明している。
「問題意識」や「哲学」があれば、ジャンルなど関係なく書いていくことができるだろう。もっと長い小説にもチャレンジしてほしい。またいつかどこかで読めるときを楽しみにしている。(朝日出版社・森)


「水溶性宝石」/ひろせりんごさん

〈選評〉
昭和のおどろおどろしい雰囲気を古めかしい語彙で的確に演出しつつ、お題の語にふさわしい強い情動がしっかり描けていると感じました。(堀越英美氏)

名前や言葉選びや舞台設定が一つひとつ、古い探偵小説のような雰囲気を醸し出していて魅力的だと感じました(お題以外にも古語を使ってくださっています)。お題の古語そのままの赤や焔、憎しみに燃える少女という鮮烈なシーンが印象的で、それがそのままお話を牽引する「謎かけ」となっている点がすばらしい。1万字という字数制限のなかで暗い秘密を抱えた名家の歴史が語られ、しっかりとした、意外性がある二重の謎解きが来るという構成も見事でした。また、晶子と瑠璃というキャラクターが対照的にしっかり描かれていると感じました。晶子をただ怒りに震えるだけの少女ではなく、問題を直視し現実を変える力をもつ大人の女性として描いていることにも好感が持てました。(ただ、もしも字数が許せば、晶子が瑠璃に向ける感情・関係性、瑠璃自身の性格や抱える謎についてもう少し描写があっても、とも感じました)。「わたしはきっと、あのとき聴いた、遠く鳴りとよもすような石たちのひそかな囁きと、雨雫に閉じ込められて、儚く焔のように燃える晶子のなかに、じぶんの一生を視つくしてしまったのだ。」という一節は、たいへんエモいですし、そうした強いエモーションに、しっかりとした理由=謎解きが与えられている点を評価しました。(朝日出版社・お)


■pixiv賞(3名)
賞品:朝日出版社からの講評
受賞作のハイライトのシーンを抜粋したアクリルブロック、および海島千本さんの表紙イラストのアクリルブロック

「ふれあううつわ」/王月ようさん

〈選評〉
とにかく疾走感がある書き出しから印象的、魅力的でした。割れる美しいボトル、ガラス戸の向こうで灯るタバコの火。「一体なにが起きているんだろう」と思わせられ、引き込まれました。コンセプトカフェ、推し活などの虚実入り交じる現代的な関係性、主人公が「ふゆの」によせる特別な感情――「わたしの得たい対価はいつでもふゆのの反応だけで、ふゆのとの関係性ではなかった」という、名前のない、恋でも愛でもない、とてもいまふうで切実なあり方を、よく取り出してみせてくれているように思いました。そして「ふゆの」の造形には、うん、これはハマるかも、という不思議な説得力があります。意表を突く展開ですが、こういうこともあるかも、という確かな存在感があります。「玉響」というお題の古語が、割れるガラス、お互いの空っぽさ、しかし、「今この瞬間だけは、価値のある私たち同士で触れ合っている。(…) いつかすれ違うその時まで、私たちはきっと宝石でいられる」という、予め存続を諦めながら、それでもなお一瞬はこころを重ねる二人に、非常によく響いているように思いました。(朝日出版社・お)


「海月の心」/透さん

〈選評〉
チアリーディング部の結梨と生物部の真鍋、他人から見たらありえない組み合わせのようにもされるが、心のなかは誰にもわからない。如才なく人と接する結梨が自分のあり方に疑問を抱いていることも、変わり者と見なされ、自ら〈クラゲ側の人間〉と称する真鍋が人に言葉と気持ちを届けたいとときに思うことも、伝わるものではない。正反対に置かれそうな二人が、生物室でクラゲの生態や枕草子について話しながら、次第に心を通わせていく。〈分からないなら、分かりたい。遠いなら、近づきたい〉。自分の気持ちを受けとめて、相手に真っすぐに差し出していく結びは、照れを覚えてしまうほどまぶしい。相手を否定するのでなく、うわべのやりとりにとどまるのでなく、気持ちをそっと送り合うこと。人間の心と、海月の心。ありえないと切り捨ててしまっては触れられなかった。高校時代の甘酸っぱい記憶が立ち現われる物語に、海月の骨を見つけた思いです。(朝日出版社・橋)


「あるいは泡沫の夢」/金曜ひつじさん

〈選評〉
「人は演技をする。それは「舞台」だけで起こることではない。いや、すべてが「舞台」なのだと言うことまでできるだろうか。その広がりを持ったラストを評価します。
この双子は「似ている」、しかし本当に「似ている」のだろうか?
小説という文字の上では「似ている」と書いてしまえば「似ている」となってしまう。その恐ろしさ・残酷さ・不思議さを引き受けて、それでもなおどのように書いていくのかを考え続けることができれば、さらに大きな小説が書けるはずです。期待しています。(朝日出版社・森)


受賞者のみなさま、おめでとうございます。

この度はたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。今後もpixivに投稿されている小説をお楽しみください。

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